人員の過不足状況(中小企業白書2020年版から引用)

帝国データバンクによると、従業員不足による収益悪化などが要因となった「人手不足」による倒産は増えています。、2013年に負債1000万円以上の「人手不足」倒産は34件でしたが、2019年には185件に達しました。

今後についても、日本の将来推計人口を見ていると、日本では働き手となりうる生産人口(15~64歳)が減っていきます。2015年には8000万人強でしたが、2030年には約7000万人、2040年には6000万人弱となり、20~30代の採用はますます難しくなると考えられます。

日本の将来推計人口(経済産業省のサイトから引用)

人材確保が難しいと感じている場合、見直したいポイントを整理しました。

厚生労働省が2019年(令和元年)に発表した「労働経済の分析」は人手不足に悩む企業の課題を次のように指摘しています。

「求人募集時の賃金を引き上げる」「中途採用を強化する」といった外部労働市場から人材を確保する「外部調達」や、「現従業員の配置転換」「定年の延長・再雇用による雇用継続」「現従業員の追加就労」のように、企業内でマンパワーを確保する「内部調達」などに取り組んでいる企業が多い一方、「省力化・合理化投資」「離職率の低下改善に向けた雇用管理の改善」「従業員への働きがいの付与」といった人材の調達以外の方法で人手不足の緩和を目指す「業務の見直し等」に取り組む企業は相対的に少ない。

労働経済の分析

このほか、採用コンサルタントの山影誉子さんは記事「中途採用で即戦力を求めすぎなのか…中小企業が採用に成功する3つの準備」のなかで、中小企業で採用が難しい3つの理由を挙げています。

  1. 自社を主観でとらえる
  2. 単純に「即戦力が欲しい」と考える
  3. 採用に関する「思い込み」にとらわれている

そのうえで、採用の成功に向けてのポイントを3つ紹介しています。

  1. 自社の強みと弱みを具体的に、客観的に洗い出す
  2. 多くを求めすぎない
  3. 採用に関する情報収集を行う

埼玉県小川町の「セキネシール工業」では、3代目の関根俊直さんが前職での経験を生かし、求人サイト上で福利厚生をより具体的に書くなどの工夫をしています。

セキネシール工業3代目の関根俊直さん。セキネシール工業(埼玉県小川町)は、前身の関根製作所が1946年に手すきでオイルシートの製造をしたのが始まり。従業員58人。

自社で働くことがどんな魅力があるのかを書き出すことも大切です。求職者に会社のことを知ってもらうために「採用ピッチ資料」として会社のことを公開する手法もあります。

岡山市で働き方改革を支援する「WORK SMILE LABO」(ワクスマ)は積極的にテレワークを取り入れることで、子育て女性が離職せずに済むようになりました。

そのほか、求人票に「在宅ワークを活用した柔軟な働き方が出来ます」と追記すると、中途の求人が前年の3倍ほどに増えました。

岡山市で中小企業の働き方改革を支援する「WORK SMILE LABO」(ワクスマ)でテレワークをする女性社員(右)

離職を防ぐには、産休・育休が取りやすい組織づくりも大切です。

静岡県三島市で育児中の人材の採用・定着支援を手がける「ネイトブランディング」代表の野田千絵さんが記事「育休後の女性の離職・退職を防ぐには? 制度の前に復帰を助ける信頼関係」で、「妊娠中からできるサポート、産後についても、制度を導入することはとても大切ですが、まず対象となる方と丁寧に対話を繰り返すことから始めましょう」と呼びかけています。

つぎに、人材確保に向けた具体的な取り組みを紹介します。

人材確保のために転職サイトを活用する企業もあるでしょう。採用コンサルタントの山影誉子さんは「企業のやり方次第、工夫次第で成果を出せるのが求人サイトです」と話し、記事「中途採用に悩む中小企業向け転職サイト活用術【失敗・成功事例から解説】」のなかで具体的な方法を解説しています。

人材確保といっても、必ずしも正社員にこだわる必要はありません。地方でも新しい取り組みをするときに副業人材を活用している中小企業がいます。

JOINS代表取締役の猪尾愛隆さんは、そんな事例を紹介しています。

たとえば、東京・蒲田の菓子用トレー金型製造会社「城南村田」の3代目・青沼隆宏社長は、副業人材の活用をきっかけに、様々な働き方の選択肢があることに改めて気づきました。

城南村田の青沼隆宏社長

ただし、副業の正社員を雇用する場合には、勤務時間や保険についてはあらかじめきちんと確認してください。

これまでツギノジダイで紹介してきた企業でも外国人が活躍している企業が複数あります。岐阜県関市の部品メーカー・マツバラや、金型製作などを手掛ける大阪市の東亜成型など一緒に働く企業が少なくありません。

外国人雇用協議会理事の竹内幸一さんは、記事「外国人採用が日本企業になじみやすい理由 選考と採用の注意点」のなかで、言葉の違いやビザの手続きについて「大きな問題ではないと断言できます」と話しています。
「既に日本に住んでいる外国人」を対象にすれば、それらの課題は比較的簡単に解決できるからだといいます。

「日本の在留資格を持つ外国人に絞って採用すれば、手続きも比較的簡単です。慣れるまでは申請取次行政書士依頼することもできます」と話す竹内さん

このほか、技能実習生という制度もあります。「低賃金・過酷な労働」というイメージも強く残っていますが、現在では改善も進んでおり、企業としても活用しやすくなりつつあります。

キャリアコンサルタントの木村千恵子さんがツギノジダイの記事「技能実習生とは?制度概要や手続きの流れ・費用・注意事項を紹介」のなかで「単なる人手不足の解消ではなく、経営戦略の一環として積極的に外国人を活用する場合のポイントを紹介します」と説明しています。

また、現場の専門業務を中長期的に任せられる人材を育成するための「特定技能」という新たな在留資格も設けられました。

さいごに組織改革から人材確保に力を入れている企業の実例を紹介します。

住宅用のシステムキッチンや建築現場の建材など、建築資材の配送に特化した横浜市の運送会社「大松運輸」では、2代目社長の仲松秀樹さんはが「3K」の環境改善に取り組み、健康経営やユニークな採用活動に力を入れ、売り上げを約4倍に伸ばしました。

大松運輸の急成長を果たした2代目社長の仲松秀樹さん

長崎市の「福徳不動産」の3代目福島卓社長は、社員の個人プレーではなく、面接や社内見学を通して一人ひとりとじっくり話し、やりたいことと得意なことを確認。
「利益を重視する」という福島さんの考え方に共感し、自分なりのビジョンを持つことのできる人だけを採用するということを粘り強く続けていきました。
こうした結果、組織プレーで利益重視の組織に改革することができました。

全国各地のプラントの定期修理(定修)を担う「柳井工業」(本社・大分市)は、違う業界からも優秀な人材を引っ張ってきたいと考え、給与テーブルを公開しています。

柳井工業が公表している給与テーブル